6日目〜バクシーシ〜

2日目にもなると、ストリートチルドレンはもう私たちツーリストの中でも
悲しいことに、日常化されてしまった。


バクシーシ。


とりあえず、お金をせがむ人たち。


「このタージマハルの置物、100ルピー!」

観光スポットには、何か物をすごく高値で売り付けてくる子供も少なくはなかった。



日本でいえば小学校低学年、中学年くらいの子供たちが、必死に物を売り付ける。


自らを猛烈にアピールする子、
シャイな子、
さまざまだが、共通するのは笑顔だった。


どんなにいらない、いらない、と言っても、
同じ笑顔でしつこく付きまとってくる姿はなんだか奇妙だった。




そんな中、一人の女の子に会った。

私はみんながトイレに行っている中、一人早めにバスに乗り込んでいた。

するとバスの外からボールペンを私に見せてくる。


「300ルピー。買って」

一度買うとしつこいし、無視していると
私がどれだけ無視していても、彼女の口から出る言葉は同じ。

「ルック!
ベリービューティフル!
フォーギフト!
オーケー?
じゃあ200ルピー!」

先に言うけど、私はチラッとも見ていない。


それが10分続いた時、未だに話しかけている彼女を見た。

「いくら?」


「100ルピー!オーケー?」


なんだか、すっごい根性だな、と思った。

女の子は満面の笑みでサンキューと言い残し、次のツーリストのところへいってしまった。

それはどこか勝ち誇ったような、笑顔をしていた。



生きるか、死ぬか。

その金額は日本円でわずか200円。





けっきょくそのキラキラしたペンは見かけ倒しで書けなかった。

その女の子の勝ち誇った笑顔がまた、頭をよぎった。



でも、私はもうそんなことはどっちでもよかった。